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雲中地蔵尊

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2012年製作、檜

-南三陸町の木を持っています。使いますか?-
ある方が、私に木材の切れ端をくださいました。
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宮城県南三陸町にある大雄寺、2011年3月の東日本大震災で被災した山門の修復の際に使われた檜の切れ端が、都心で開かれた被災木についてのイベントに持ち込まれ、そのある方が入手、保管していたものを、戴くことができました。私が仏像を彫っていることを気にかけてくださり、その大切な木を譲ってくださいました。ほんの小さな木片だから役に立つかどうか、とその方は仰っていましたが、私が普段彫っているお地蔵さんとほぼ同じような大きさの角材でしたので、ちょうど良かったのです。
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これは、その檜を使って彫ったお地蔵さんです。

少し刀を入れてみると、程よく堅く、そして心地よい音と香りがしました。
いつもと同じお地蔵さんを彫るのもよかったですが、ちょっと違うようになりたげだ、そう思い、初めて光背を一木で作ってみようと思いました。

彫り進めていると、自分が眠くて夢でもみていたのか、木が

「雲に乗せてくれ、早くゆけるよう、雲に」

と、そういっているような気がしました。
普通の台座にするつもりだった足元をしばらく眺めていると、不思議です、雲が彫れそうだと想ったのでした。

地蔵菩薩は、地獄の底まで降りていって、同じ地に立って人を救ってくださるそうです。
「早くゆけるよう、雲に」
そう想ったのは、そういうことを知識として知っていたからだとも思いますが、それ以外にも何かあったのだろうか、この木と出逢うことになっていたのだろうか、そんな、絵空事のようなことを、想ったりするのです。

震災後一年くらいまでは、被災された方々が必要としていることを自分が直接できればいいのに、そんな思いが強かったですが。
ですが今は、被災された方々だからとか、被災した土地だからとか、そういうことを飛び越え、よくしてくれる方々がいる土地だから、応援したいから、そんな気持ちの方が強く在ります。

同時に、甚大な被害とともに途方もない数の命が奪われていったことも忘れられません。
せめてその鎮魂を祈ることだけはずっと、と、そんな気持ちでもいます。

心を込めて、祈りを込めて、丁寧に彫り上げました。

祈りが、雲に乗って飛んでゆきますように、と。

そしてこのお像さんは、木をくれた方の手によって、南三陸町の無料自習支援施設TERACOに納めさせて戴けました。

他の写真がこちらに少々あります。宜しかったらご覧下さい。