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思い出せなくなるその日まで

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五月、利き手指の手術を受けて一ヶ月の間何も彫れなかった。

九月、乗用車にはねられ二ヶ月の間満足に走れなかった

出来ないことが自分に様々なことを教え結果ずっとし続けているだけでは登ることのなかった道を案内され味わうことのなかった想いを感じられたことを今思い知っている。

小走りでも途中歩いてでも、自分の足で地を蹴って走れることの何と嬉しいことか。

力が満足に入らなくてもこの手で木を支えて鑿を握り締めて音を立てて木と話しほとけを彫り起こすことの何と喜ばしいことか。

一見して無駄に思えることも、実は無駄なことなどひとつもない。
回り道は、結局それが自分を伸ばす好機の道だったという仕掛けが、人生にはいたるところにあった。

本当の答えが出るのはかなり先の話だ。おそらくこの一生が終わるころだろう。もしかすれば答えが出ないかもしれない。だから、この身に起こるすべてのことを無駄扱いせず、打算的に過ごすことなく、数珠つなぎにしてこの心に絡げて暮らしていこう。

働くことも、走ることも、彫ることも、祈ることも
想うことも
すべてつながっている。